侍ジョブクエストに登場する敵役、ウゲツ。彼が率いる一派は武力による幕府転覆を目論んでいましたが、一派の呼び名は「攘夷派の侍」でした。これほんとに合ってるのかな、の記事にござる。結論を先に申せば、
「攘夷派より討幕派では?」
です。以下はその論拠にござる。
ウゲツの主張
ウゲツ一派の首魁、ウゲツの主張は以下です。
「ひんがしの国」はな……太平の世が続きすぎた。世を統べる者は志を失い、怠惰に時を過ごし、腐敗を極めている。最早、幕府を討つことでしか、この国は変えられぬほどにな……。この国を変えるには、もう一度、乱世に戻すしかないのだ。その戦乱から新たな世が生まれるというもの……。偽りの平和を終わらせ、やがて来る真の太平のため、群雄割拠の世で刀を振るう……それこそ、侍の本懐だとは思わぬか?
彼らは、腐敗した幕府の討伐により乱世を招き、その群雄割拠が新たな世を生み出すのを欲しているとのこと。そして、そこから先に何か深い考えがあったのだとしても、これ以上は他でも語っておらず、単純に純粋に幕府を倒したい!の主張に終始します。では、これが攘夷思想なのでしょうか。
攘夷とは
幕末の思想・運動で、端的には排外主義です。尊王論と結びついた尊皇攘夷をご記憶の方は多いかと存じます。元は古代中国の思想で、自国を中心にした四方の非支配民族を 東夷 / 西戎 / 南蛮 / 北狄 の四夷と蔑んだのが発端です。夷は弓を構えた人の象形なので「未開の戦闘狂野蛮人ども」程度の意味になります。つまり、渡来人やら南蛮人やらはそうした性質であり、神国の御為に夷=は攘うべきだとの主張です。
「攘夷」の意味はそこまでで、幕府をどうこう等はまた別の言葉や定義に頼る必要があります。
討幕 (倒幕) とは
同じく幕末、幕府を倒して新しい体制を創るべきとする思想が勃興します。特に下関戦争後に広まったとされますが、なかでも武力での解決を訴える者は討幕派と呼ばれました。攘夷を達成するために討幕派となる、でニュアンス伝わるでしょうか。討幕派と対をなすのが幕府を補佐する佐幕派です。
佐幕派にも程度の差が存在し、従順な場合もガンガン物申す場合もありましたが、討幕派との違いは、まがりなりにも今の世は幕府あればこそで、改革を志すにも幕府の存在は不可欠と考える点です。そしてこの討幕と佐幕の関係、攘夷どうこうはガッツリさておき、まさにウゲツ一派と赤誠組の構図なんですね。
よって
× 攘夷派
○ 討幕派
(ृ ‘꒳’ ृ)攘夷ではござらんくない?
攘夷派が正しくないと考える理由は
尊王攘夷の手段として倒幕が選択肢のひとつだった攘夷派と、通過地点であろうと討幕を必達としたウゲツ一派は主義が異なるためです。
攘夷派とは、外国勢力の払拭や掃討を望む者たちを定義する言葉です。彼らの目的は攘夷であって、夷を攘えるのなら幕府の存亡はどうでもいい。余談で触れた大攘夷派はまさにそれで、倒幕は攘夷を果たすための手段に過ぎませんでした。ウゲツ一派は討幕が必須である以上、齟齬があります。
討幕派のほうが正しいと考える理由は
ウゲツ一派が討幕しか唱えないからです。その先はなんにも語られません。
幕府を倒すのは乱世にしたいからだし、乱世にしたいのは群雄割拠で活躍したいからです。民草の犠牲や乱世に陥った際の帝国の介入予測など、現実的な思想の欠如した理想論は、ただただ討幕を夢見ただけと断じられるのが残念ながら当然です。政治的な主張がなんにもない以上、彼らの目的である討幕を冠するのが精々ではないでしょうか。
攘夷派と称された理由は
ウゲツの仲間だと示すためなら「ウゲツ派の侍」でも良いわけです。何故、あえて攘夷派としたのか。開発スタッフの意図を推測するほかありませんが、下のどちらかと考えます。
ほかに相応しい呼び名はあるか
攘夷派と討幕派以外にあてがえそうなのは以下のふたつと考えます。
まとめ
今回述べたのはあくまで現実世界での用語と概念であって、ハイデリン世界でも同一とは限りません。「攘夷」という言葉の意味が異なる可能性もあります。……悪党成敗 クガネ城にて原義通りの攘夷派が登場するので、その逃げ道はちょっと厳しそうですが。
モブキャラの名前がちょっと違うかも?くらいのお話ですから、さほど重要なことではありませんが……こういうのを見つけて深堀りしてみるのも楽しいものなのです、ということで何卒!
攘夷派の中に人斬りウゲツが紛れ込んだって解釈すればなんとか筋は通りますかね。
なるほど確かに、攘夷派を討幕に利用しようとしたのであれば筋は通りますね!
・ウゲツが攘夷論陣営に紛れ込む
・大攘夷の強硬派筆頭として討幕を煽り訴える
・勢力を拡げて手駒にする
という流れなら、周囲が「攘夷派」と表されるのもおかしくありませんね。陣営では適当に討幕後の話にあわせながら、実際は討幕さえ出来れば良く、赤誠組屯所での話はその発露だったとも考えられます。
そうすると、ウゲツ敗北後に赤誠組 (あえて言えば小攘夷派) へ複数合流したことあたりにも理由が欲しくなりますが、そうした改革派は結構夢見がちな方もおられそうな印象ですし、それはそれで……なんて投げっぱなしでいいのかもしれません₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎