美しい輝きが目を引く一振りです。乳白色に近い優しい色合いを基調とするのは共通ながら、【改】は蛮神ビスマルクの羽根と、象徴である「バブルブロウ」をモチーフにした泡のエフェクトが立ち上ります。同じ型の刀ですが、印象はかなり異なるといえましょう。
造 … 鎬造。
刃 … 細直刃。
鐔 … 白い翼の意匠。
柄 … 白革の出し鮫柄。
鞘 … 丸呑みビスマルク。
素体こそ同じながら、エフェクトの有無でかなりの別物感。色味もあいまって、どことなく天使風とも言えそうです。実際には浮き島を丸呑みしちゃうんですけども。
光の加減もあって大変判別しづらいものの、先反りの細直刃の鎬造です。微妙な境界線がご確認いただけるかと思います。刀身長も標準的な打刀サイズで、形状はとてもオーソドックス。
鐔寄りに彫刻が施されており、ちょっとした意外性や遊び心を感じますね。樋のような機能ではないと考えられますが、こうした溝は刀を振るったときの音に作用します。もしかしたら、この形状から発せられる風切り音が、ビスマルクの咆哮に似ている……のかも。
鐔は、羽ばたくビスマルクのフォルムがモチーフでしょうか。刀身とくらべ比較的おおぶり、厚みのある仕上がりです。柄は真鍮のような金属と白い革で作られています。柄巻はなく、革を直に握るタイプですが、文字にした印象よりはグリップが効きそうな見た目です。
特徴的なのは、刀身とは不釣り合いなほどに大きな飾り。鞘ごと刀を呑み込まんとするビスマルクそのものが象られています。ここまでストレートにモチーフを表現したものは珍しい。見ようによっては「鞘に釣られたビスマルク」とも捉えられ、それはそれで愛らしい、かもしれません。
単体でのデザイン性はもちろん、Patch5.x のアライアンスレイドでコラボした衣装との相性も良く、知る人ぞ知る本品。シンプルかつ良質な刀をお求めの際には、候補に入れてみてはいかがでしょうか!
「蛮神」として相まみえることとなるビスマルクですが、本来語られている伝承は以下のとおりです。
むかし、むかし、空に雲海がなかったころ……。海を泳ぐ鯨の群れに、白い身体を持つ子が生まれたそうな。しかし、しかし、黒き身体の鯨たちは、白き身体の鯨を蔑み、虐げ、ついに殺してしまったそうな。その姿を哀れんだ神々は、白鯨の魂を天で蘇らせたという。神の力を得て蘇った白鯨は、雲をもくもくと吐き出して、争いなく泳げる雲の海を創ったそうな。こうして、こうして、白鯨は雲の神、雲神さまとなられたのだ。心優しき雲神さまは、海に浮かぶ島々を、雲海に引きあげなされ、虐げられていた民を導いた。こうして、こうして、バヌバヌもまた、雲海の民となったのだ。
……これ、星座かなにかの伝承で似たお話を聞いたような記憶があるのですが、思い出せない!というか「哀れに思った神が天に召し上げる」は星座の由来として超王道ですし、単純にフォーマットを借りただけなのかな。心当たりのある方やご存知の方はぜひ教えてくださいませ!
さておき、ビスマルクの伝説はバヌバヌ族のみならず、各国にも知れ渡っています。リムサ・ロミンサの「レストラン・ビスマルク」の由来は以下。
当店の屋号は、伝説の白鯨「ビスマルク」に、ちなんで名付けられたものなんですよ。すべての物を呑み込む、幻獣のひとつ。当店にいらっしゃったお客様は、「ビスマルク」の様に、大口を開けて、すべての料理を平らげてしまうからです。
……なんだか違うでござる。バヌバヌの伝承は「海に浮かぶ島々を雲海に引き上げ、バヌバヌを導いた」が着地点です。一方のリムサ・ロミンサでは、すべてを喰らい尽くす姿が語られています。なぜか。
おそらくですが、バヌバヌ族とリムサ・ロミンサでは「ビスマルク(白鯨)」という名前こそ同じでも、別存在だったのではないでしょうか。バヌバヌ族の出自を裏付けるための国生み神話として「雲神」が生まれた一方で、リムサ・ロミンサでは現実世界の小説「白鯨」と同様の実体験や噂がベースなのかもしれません。海洋国家だしね。
別存在なのに特徴が偶然の一致をみた可能性はあるし、バヌバヌからヒトに伝わるなかで、お話が伝言ゲームしちゃった可能性もあります。以下でご紹介するリヴァイアサンやバハムートのお話をふくめ、いろいろと想像や推測を巡らせてみるのも楽しいですね!
くじら。英語で Whale(ほえーる)、フランス語なら Baleine(ばれーぬ)、ドイツ語では Wal(ゔぁる) ですが、ヘブライ語では לִוְיָתָן(れゔぃあたん)。読めない書けないはさておき、この「レヴィアタン」を語源とするのが、ご存知リヴァイアサン(Leviathan)。
同様の関係で有名なのは、ベヒーモスとバハムート。旧約聖書に記されたベヒーモスをイスラムさんが借用したのがバハムートとされます。ただ、キリスト教のベヒーモスは地上をテリトリーとする獣なのに、イスラムのバハムートは魚。なぜそうなったのかは明らかになっていませんが、キリスト教における陸の王者がベヒーモス、海の覇者がリヴァイアサン(表現力)だったのを、借用する際に入れ違えて記述しちゃったのでは、と言われています。つまり、クルザスのベヒーモスとダラガブのベヒーモスとラノシアのリヴァイアサンとバヌバヌのビスマルクは、それぞれ繋がりがあるのですね。
もちろん、これはあくまで知識のお話。現実世界から見た設定のルーツが同じであろうと、実際のエオルゼア世界では別存在である以上、「小話」として語られるべき部分です。しかし、しかし、そのような知識こそ、春の陽光を満身に浴びた果物のように、ふくよかな喜びをもたらしてくれるのです。
2019年12月3日 … 初版公開。
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