四聖獣が一、青龍の荒御魂を鎮めることで手に入る刀です。四聖獣奇譚というストーリー、青龍という登場人物のディテールやニュアンスを、アイテムに落とし込んだ逸品です。また、鞘自体の装飾の繊細さもさることながら、実用的な下げ緒が付いているエオルゼアの刀は非常に珍しく、そういった意味でもエッジの効いた名品であるといえましょう。実装から日を置いて、エフェクトつきの「【輝】」が追加されました。
造 … 鎬造。
刃 … 鱗の紋様。
柄 … 蛇腹の鮫皮、蛇の目貫。
鞘 … 螺鈿細工?鱗模様、浪人結びの下緒。
鐔 … 菱形。
まず、四聖獣・青龍という存在について。四聖獣奇譚は、上代(平安時代まで)をモデルとして展開される物語です。朱雀の歌に出てくる単語や言い回しなどから、個人的には確定。
ゆえに、登場人物のテンゼンや四聖獣たちは、平安時代の装いや風潮に影響を受けているわけです。そして青龍鱗紋刀。平安時代の刀は「腰反り」という大きな特徴を持ちます。標準的な(おそらくは寛文新刀がモチーフであろう)と比較してみました。
反りの中心だと私の思うところに赤色の矢印を置いてあります。棟区が地面と垂直になるように持った状態で、精霊銀打刀はまっすぐ伸びた後にクイッと反るのに対し、青龍鱗紋刀はスタート直後にグッと反っています。……が、自信はありません。「四聖獣奇譚が平安時代ベースだから平安期の刀だと良いな!」という思い込みの産物である可能性は全く否定できません。でも、仰け反るようなフォルムかつ踏ん張りがある(刃の根本と比べ先端が細い)等、古刀のエッセンスが濃いめだと思うんですよね……!ガチ刀剣審美家のお方に見解を伺いたいところですが、ひとまずさておき。
画像引用元→刀の下緒の結び方。③左右別れ結び。別名、浪人結び。
エオルゼアの刀では珍しい、この下緒(さげお)について。この結び方は「大名結び(別名:浪人結び)」と呼ばれ、通常の蝶結びよりも見栄えのする形として好まれました。ただ、もっぱら鑑賞用途の結び方であり、実戦向きではない……のですが、そこはエーテルのちからでなんとかできる!よし!
蛇腹の柄巻、鱗文様の鞘、果ては刀身までもが鱗紋という、蛇感強めの一振りです。四聖獣奇譚に登場する青龍は大蛇が転じた存在であるからと考えられますが、そうした着想にもとづいてしっかりとモデリングされた秀逸な一振りといえましょう。
画像引用元→都香庵 – 金襴織物 鱗文大(黒・銀)
「鱗紋刀」というモノについて。動画の解説文にて「うろこもんかたな」としましたが、いわゆる重箱読みなのは、青龍は漢語で鱗紋刀は和語と解釈したからです。「せいりゅうりんもんとう」のほうが音の通りは良いのですけれどね!
鱗紋(鱗文)とは、三角形の図形を規則正しく配置したものをさします。古代より世界中で用いられてきた意匠であり、特に魔除け、死者の埋葬品などに好んで施されたといいます。「幽霊のおでこには三角形の白い布」のイメージも、その装飾品を身に着けて埋葬されていたために出来上がったもの。時代が下り、蛇あるいはオロチ、ひいては龍を象徴するデザインとして、鱗紋は龍蛇信仰と密接に結びついていきます。北条氏の家紋および由来なども、まさにそれですね。そして、龍蛇信仰は、まさしく青龍を取り巻いた出来事の肝。なればこそ、御神体ともいえる刀や鞘に鱗紋が含まれるのは、至極当然であるといえましょう。
刃を頂点に、刃身にも龍の鱗紋があしらわれています。まさに鱗のように光を反射するさまは、非常にインパクトがあります。鐔(つば)に相当する部分も蛇の意匠と思われ、寸評に記したとおり、細部にまで意識が行き届いた逸品という印象です。英名「Seiryu’s Rippled Katana」、青龍の漣(さざなみ)の刀、という名称も、海嘯を操るとされた龍蛇を想起させる良い表現ですね。
龍蛇信仰に翻弄された一匹の蛇は、テンゼンとの出逢いにより救われ、テンゼンとの行脚により経験と功徳を積み、テンゼンとの別れを経て青龍へ転じました。一匹の蛇が、青龍に、そして荒御魂に呑まれた災厄の化身になろうとしたとき、在りし日のテンゼンとおなじ力を持つ光の戦士が現れたのは、彼らが言うように天命であったのでしょう。これからも先へ進む光の戦士にとって、ひんがしの国の四聖獣奇譚は、通過点のひとつかもしれません。けれど、この刀こそが、彼らと冒険者とが紡いだ歴史と奇譚の結実であり、ふと眺め握るとき、場所も時代も遥か彼方から続く、縁を思い出すのです。
……ただのアイテムに、それ以上の想いや価値を見出す。この刀剣目録のような、そんな遊び方も、なかなか楽しいですよ!
2020/08/28 … 青龍鱗紋刀【輝】を追記。
2019/06/06 … 体裁の改善。
2019/03/17 … 誤表記の削除。
2017/03/06 … 初版公開。
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