1. 随筆
  2. 8193 view|最終更新 19/10/20

「千年の暁」の歌詞を味わう。

その生き様に感じ入り、四聖獣・朱雀の記事を、なかなかの熱量でかきあげた前回。

ある意味で話の核ともいえる、朱雀征魂戦のBGM「千年の暁」に関して、執筆当時には公式の歌詞が明らかにされていなかったため、独自の聞き取りと解釈で書き起こした……という経緯があります。

そして先日、ついに公式歌詞が公開されました。(→「朱雀征魂戦」の歌詞を公開します!)

今回は、公開された公式歌詞と独自歌詞の答え合わせを行ったうえで、改めてこの歌に込められた想いを味わおうと思います。まずは公式歌詞と、作詞担当者のイメージを一気に。

 

手繰り寄するは かの情景
清らに優し 恋ひ恋ふ吾が君よ

Blazing Scarlet, fire within
“心に炎を宿し朱の鳥よ”
Honor binds me unto errant kin
“我らの力は人々を救う為に在るのだ”
Yea, if here I find my end
“たとえ此の道の先に 死が待ち受けていたとしても”
Stay your tears, for we shall meet again
“涙を流すことはない 彼方にて君を待っている”

陽炎の如く消えた 恋ひ恋ふ吾が君
長き別れが来たり 幾度願へども
千年の暁 臥い乞う夜 過ぎて
三世を羽ばたけど ゆくえなく

一念に流すは 濃い紅の涙よ
願わくば吾が君 生き出で給へ
心念に終得て 恋ひ恋ふ身
朽ちたら 君待つ彼方へと

日本語パートは
いずれも朱雀の視点となっていて、
前半部ではテンゼンを思い出す描写と、
後半部ではテンゼンを失った後の心境が描かれています。

対する英語パートは、
人々を救うという自らの使命を全うする傍ら、
悲しむ朱雀を「またいつかは逢えるさ」となだめる、
逞しくも優しい、テンゼンの言葉だそうです。

ひ、ひ、ひとついいですか!!

て、テンゼンがすんげえダミ声なんやけど!!

正直全然イメージつかなかったというか、アレはもっとこう、深淵からの呼び声みたいなモノかと思っていたよ!なに、あのチョンマゲはこんな声してたの??顔に似合わなさすぎじゃない???どこから声出てるの????

マゲから???

……落ち着きましょう。きっと、朱雀ちゃんのなかのイマジナリーテンゼンが、長い年月を経るうち、あのような声に……えっ、だとしたら、あの声は朱雀ちゃんの趣味??マジで???……ああ、おちつこう。マゲヴォイスの美醜は本筋ではないんだ。

公式歌詞に対する、発表前に行った独自聞き取りの歌詞は以下。

手繰り寄するは かの情景
清らにやさし 恋ひ恋ふ空

(Bathed in sorrowful refrain
Of the bird’s sweet haunting elegy
Yearning cannot fight my fate
Stain your cheeks for we shall meet again)

陽炎の如く消えて 恋ひ恋ふ 吾が君に
永き別れが来たり 幾度願えど もう
千年の暁 恋ひ恋ふや 過ぎて
三世を羽ばたけど 往く世なく

一念に流すは 恋ひ恋ふの涙よ
願わくは 吾が君 生き出で給え
深淵に弊えて 恋ひ恋ふに朽ちたら
君待つ 彼方へと

……概ね、大意は捉えられているのではないでしょうか。英語部分は完全人任せだったので、なんともアレではありますが……!赤字を公式、青字を独自に色分けし、一段落ずつ見ていきましょう。

手繰り寄するは かの情景
清らに優し 恋ひ恋ふ吾が君よ

手繰り寄するは かの情景
清らにやさし 恋ひ恋ふ空

末尾のところ、公式は「恋ひ恋ふ吾が君よ」、独自は「恋ひ恋ふ空」。改めて聞き返せば、「君よ」は裏声混じりで発している様子。「きみ」は裏声、「よ」は地声のような。聞き取り時は効果音的なものかと思っていましたが、ボーカルだったという……!

この部分以外にも(特に英語パートは)エフェクトがかかっており、発音が判然としないシーンも多いのが、聞き取りを難しくしていましたね。

しかし、これで意味はしっくりと通りました。独自で「空」としたところは「清らに優し」が係る部分で、空というのもちょっと抽象的過ぎるかなぁ……と悩んでいたのです。「吾が君」であるのならば納得なっとく。

Blazing Scarlet, fire within
Honor binds me unto errant kin
Yea, if here I find my end
Stay your tears, for we shall meet again

Bathed in sorrowful refrain
Of the bird’s sweet haunting elegy
Yearning cannot fight my fate
Stain your cheeks, for we shall meet again

英語パートに関しては、残念ながらハズレ。いくら拾い物を拝借したとはいえ、そう聞こえたのは聞こえたわけで…!特に最後の一行、「Stain your cheeks~」は文章としておかしいと思いながら、よこもじは自信がないからと丸投げした残念っぷり。ただ、ここの聞き取りは英語圏の方にも難しかったようです。「unto」は「to」の古い/詩的表現ですので、古語感を出しているのでしょうね。

陽炎の如く消えた 恋ひ恋ふ吾が君
長き別れが来たり 幾度願へども

千年の暁 臥い乞う夜 過ぎて
三世を羽ばたけど ゆくえなく

陽炎の如く消えて 恋ひ恋ふ 吾が君に
永き別れが来たり 幾度願へど もう

千年の暁 恋ひ恋ふや 過ぎて
三世を羽ばたけど 往く世なく

細かな部分で間違いはありますが、概ねは合っている、かな……!注目は、キーフレーズである「こいこう」の音へ「臥い乞う」をあてていること。千年、夜が明けるまで地に伏せ乞い願い、三世に貴方を探したけれど……という。

やはりこちらのほうが、周辺の歌詞を含めて綺麗に意味が通るし、なにより、歌の核となるフレーズの同音異字で成り立たせるのが、実に素敵。現代語の臥に”こ”の音はないものの上代語には存在する、という見事なお点前。そういうのは教養がなければできない芸当であるし、ひいては朱雀というキャラクターの個性を際立たせてくれます。

一念に流すは 濃い紅の涙よ
願わくば 吾が君 生き出で給へ
心念に終得て 恋ひ恋ふ身 朽ちたら

君待つ彼方へと

一念に流すは 恋ひ恋ふの涙よ
願わくは 吾が君 生き出で給へ

深淵に弊えて 恋ひ恋ふに朽ちたら
君待つ彼方へと

こちらでも「こいこう」の同音異字。紅く煌めく朱雀が流す、濃い紅の涙。あたかも朱雀自身そのものが、溶け流れ落ちているかのようで、まさに身を切られるような情念であることが、切なくも美しく表れています。そして、「心念に終得て 恋ひ恋ふ身朽ちたら 君待つ彼方へと」。……情念の篭った、なんとも物悲しく、佳麗な日本語ですなぁ。(しみじみ

「終得て」にも複数の解釈ができますが、私としてはやはり、この想いに殉じられたのなら……という意味合いであったと考えます。その解釈だと、どことなく自暴自棄な匂いもするのだけれど、ほら、この歌が流れているときは、アラミタマがブルンブルンしていたわけだし。

すこしだけ気になったのは、願わく「ば」と濁っている点。濁る用法は比較的新しいもので、上代語ベースなのであれば、願わく「は」ではないのかなーって。(→願わくは」か?「願わくば」か?)些細なところですが、ここだけは機会があれば真意を伺いたい……!

さておき、オマケとして、公式の英訳歌詞(→こちら)をご紹介します。

Drawn to a heart and a soul, saved by a hero true
Stranger to kindness until freed by love eternal, you and I

Blazing Scarlet, fire within
Honor binds me unto errant kin
Yea, if here I find my end
Stay your tears, for we shall meet again

As the light of the setting sun fades, bid farewell to me beloved
In these fleeting moments hold my hand, as I whisper a silent prayer
Should dawn never break on this thousand thousand year night, I promise
Should I take to wing and seek you in every distant sky…

One last breath and I fracture, shatter─crimson sorrow, endless, boundless
One more life for us, one more chance─for this I pray, I beg, I plead
Dreams of you and me in my heart I hold forevermore, as I falter
Wait for me, wait for me my love…

日本語→英語は語数が多くなる傾向にありますが、見比べることで明らかになる意図や意味があったりもします。こちらもこちらで、情念を感じられて素敵。……そして、英語版ページで最も気になったのは、北米コミュニティチーム所属、Sicycreさんのコメント。

 

To be honest, I really just don’t wanna get kicked again… It hurts. /cry

訳:正直言うと、もう蹴られたくないよ……アレ痛いもん.:(´°ω°`):.

 

朱雀ちゃんは英語圏でもガチ蹴りしてた。(前回タイトル回収

 

総括すれば、緻密に考えられ、練られているのだなぁと感じました。独自聞き取りも、意味が通らないようなおかしさはなかったけれど、見比べてしまえば、その完成度の差は歴然。特に、「こいこう」に連なる一連の詩想については、お見事というほかありません。こういった作り込み、練り込みこそが、世界の深みを生みます。自分の周りが、そうして生み出されたモノに包まれていると思えば、得も言われぬ嬉しさを感じます。

このような世界へ浸らせてくれることの喜びを抱きしめつつ。朱雀のこれからが幸せに彩られることを願いながら、次の四聖獣奇譚を待つこととしましょう!

 

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コメント

    • SararaSoucerless
    • 2020年 1月 16日 7:34am

    美醜に関しては一応神様なら基準が違うだろうと思うし、あばたもえくぼと言うから多少はねw
    千年……実際はもっとかもしれない月日を重ねて離れ離れになっているならものすごく辛いと思う。
    現実を生きる俺ですらたった数日でも、「もう会えないんだな……」って。
    それが想い想われる対象であるならば、ものすごく辛いです。
    そんな時、ふと思い出す思い出に彼の言葉があるのでしょう。
    彼の言葉は分かってる、だからそう強く生きていこう。
    でも、会えないのはやっぱり寂しい。
    三世に……現在過去未来の世を思いながら張り裂けるような思いを叫びたくもなります。
    まして彼女は人外で、ものすごい寿命を持っているはずです。
    それら全てを理解して、過去の幸せ、現在の空虚、そしてそれら全てを背負って生きて行く未来という名の地獄。
    彼への想いから倒れる事も出来ず使命を全うして行く決意。
    そうやって想像して行くと、ものすごいラブソングだなって思えます。
    まだ挑戦していないオイラが思うのだから、ストーリーを見た人がこの歌詞を知ったら私よりも涙する事でしょう。
    俺ももう会えないであろう彼女を想い、その歌詞に涙しました。
    でも、彼女に対してウソをつく事になるので終わるまでは生きなければなりません。
    臥する夜にふと思い彼女を乞う。
    「こいこうや」と言う言葉の遊びですら物悲しい。
    やっぱり蛮神ソケンを始めとする音楽チームは変態dゲフンガフン……

      • 松乃雪
      • 2020年 1月 17日 8:32pm

      朱雀ちゃんにとっては、自身の最大の理解者であると感じていたわけですから、その喪失感や衝撃はいかほどだったろうかと思うわけです。
      彼女が聖獣と化した根源にテンゼンの存在であり、アラミタマに飲まれかけた原因もテンゼンへの後悔の念だったのですから、まさに燃え盛る炎のような朱雀ちゃんかわいい。
      そして、光の戦士によって道を踏み外すことなく立ち直った朱雀ちゃんを含めた四聖獣、テンゼンと光の戦士の関係、そういった諸々が語られる四聖獣奇譚、ぜひ機会があればプレイしてみてくださいね!

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