1. 随筆
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「昔より 主を討つ身の……」

新生と紅蓮のネタバレを含むため、一応閲覧注意でござる!

エオルゼアで紡がれる物語に興味を持っているプレイヤーならご存知であろう「エオスト」管理人・lazyさんのツイートで、以前記事にしようとしていたものを思い出しました。

この句は、織田信長の三男・信孝(のぶたか)が詠んだ辞世の句といまに伝わります。非常にざっくりと言えば、信孝は秀吉一派との権力闘争に敗れ、26歳の若さで自刃したのです。全文は以下。

「昔より 主(しゅう)をうつみの 野間なれば 報いを待てや 羽柴筑前」

「討つ身」と「内海」のほか、内海の野間(知多半島にある野間大坊)で家臣に裏切られて謀殺された源義朝にもかかっています。義朝を騙し討った長田忠致(のちに非業の死を遂げる)に羽柴筑前=秀吉をなぞらえて、貴様も同じ目に遭わせてやる!と、怨嗟に満ち満ちた句なのです。

さらには、切腹しても怒りは収まらず、自分のはらわたを掴んでブン投げたというからびっくり。自刃の舞台となった安養院には、そのときに血を浴びた掛け軸が今も伝わるといいます。

脱線:真贋について

現在、この辞世の句は「後世の創作」であるとの評が多いようです。辞世の句とは、自らの一生を句として表現するもので、公家としても認められていた信孝が、ここまで恨み骨髄に徹した句を残すだろうかという疑問。さらに「たらちねの 名をば下さじ 梓弓 稲葉の山の 露と消ゆとも」という辞世の句も伝わっており、そちらが真作ではという疑問。自害を命じたのは秀吉ではなく信雄であり、羽柴筑前と詠むのは不合理という疑問。しかしながら「たらちねの」は豊臣アゲ極まった「天正記」での記述であるため信じがたいとか、抑えきれぬほどの憤怒がやはりあったのだとか、真実は明らかではありません。

個人的な考えですが……辞世の句は、候補としていくつか用意した者も居たといいます。信孝もそのようにふたつ作り、最期の最後……「昔より」を選んだのではと想像します。自害を命じたのが信雄であっても、恨みの矛先として秀吉を名指ししたのは、本能寺前後の顛末を考えればわかる気もするのです。

……ただ、現実での真贋は、エオルゼアのお話を語るのに重要でないのも確か。というわけで脱線でした!

ひんがしの国にどのような歴史があり、この「古い句」がどういった意味を持つか等、詳細は窺い知れません。しかし、このシチュエーションでユウギリがこの句を引き合いに出したこと、その後のストーリーにおける彼女の振る舞いを考えれば、僅か一文なれども、その奥深さに唸るばかりの拙者なのでござる。

ウルダハの一件において


本セリフは、イシュガルド戦勝祝賀会を端緒とする政変の真実が明かされ、人々を欺こうとしたテレジ/アデレジ テレジ・アデレジの策謀が潰えた際のものです。ここでの「昔より 主を討つ身の……」が持つ意味とは。

この句、現代日本の意味とは少し異なり、臥薪嘗胆や捲土重来のニュアンスを含む執念や怨念のフレーズとして伝わっているのではと思うのです。おなじ意味だったのなら、(戦勝祝賀会で)死んだのはテレジ・アデレジだけであり、ユウギリが奴の想いを代弁していることになってしまいます。それはちょっと考えづらい。

このシーンは、ラウバーンや冒険者の熱意や執念が事態を切り開き、よき結末をたぐり寄せたことを目の当たりにしてのセリフなのですね。感じ入った結果、句が口をついて出たのであって、ナナモ女王に対するラウバーンの姿と関係を、ドマと自らのそれに投影したためではと感じるのです。

セリフ初見時は「羽柴秀吉」と「テレジアデレジ」が同じ音数だ!!と感心したのですが、そもそもこの時点でテレジ・アデレジは先んじて報いを受け2分割されていますから違ったね、なんて脱線はさておき。

後のストーリーで明かされますが、ユウギリは「自分が『ドマを取り戻そう』と言うことに迷いがあった」と語っています。しかしその迷いを振り切れたのは、冒険者の姿を見てきたから……ともデレて打ち明けてくれる背景には、この一幕が含まれているのでしょう。

ドマ奪還において


「ウルダハの奪還」を経て、ユウギリは「ドマの奪還」に臨みます。しかし、メインストーリーでも描写されたように、冷静さを失い強硬策に頼んだ結果、命を落としかけます。普段の彼女からは想像もつかぬ振る舞いは、この句に満ちる執念や怨念に囚われていたから……と考えれば、やけにしっくり納得できるのです。

大切なものを壊し尽くされた怨念、主のカイエンを討たれた無念、必ずや主と仲間の仇をという執念を、忍びの使命はおろか自らの命をも捧げ雪がんとする彼女の姿は、信孝の激情が乗り移ったかのようではありませんか。あるいは、国主が討たれた過去への最大の自虐……翻せば最大の怨恨でもって、

「昔より 主を討つ身の ドマなれば 報いを待てや 帝国の狗」

……と、辞世の句をしたためてすらいたのかもしれません。怖気立つほどの覚悟で……すが、あくまで私の妄想なので本気にはしないでね₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎

その後


ドマ奪還は成り、ユウギリも国主ヒエンも健在です。ユウギリが「報いを待て」と念じていたであろう面々も、おおむねはそのとおりになりました。晴れてハッピーエンド……に思えるけれど、「人を呪わば穴二つ」なんて故事成句もあります。報いは報いを呼び、火種は数を増して飛び散り、憎悪は連鎖するものです。

……そうなるものと知っていても、ユウギリは自ら刃を置くわけにはいかなかったのでしょう。国を失った民、国に殉じた仲間、多くのひとびとの過去と未来を背負い、前へ進むしかなかったのですから。

その彼女が、自らを奮い立たせるため、激情をすら糧とするために、この句に寄せた想いもあったのでは……と考えてしまうのです。

おしまい


₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎うん……。おしまい……。

₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎うまく表現できないね……。

₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎ユウギリさんはね……しあわせになってほしいよね……。

₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎……イッセもそう思うよね?

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