「Crypt(地下聖堂)Lurker(潜む者)」の名があらわすように、どこか陰鬱な趣を感じさせます。巻きつけられた鉄線には錆が浮かび、鋒付近には矢疵も見られます。尋常ならざる雰囲気の一振りです。
造 … 鎬造。
刃 … 直刃。
鐔 … 喰出鐔。
柄 … 黒染の 出し鮫柄。
鞘 … 黒染革、金物、錆びた鉄線。
製法が折り返し鍛錬かは議論の余地があるものの、鎬造と直刃の特徴が見られます。あわせて目を引くのが、鋒 付近にある矢疵(やきず)。後述しますが、この疵は強靭な刀の証とされます。峰側は根本から先端に至るまで飾り彫りがされており、宗教的・呪術的な印象を醸し出します。
他の一般的な刀のように柄巻はされておらず、出し鮫柄に近いと思われます。柄の紋様は教会や宗教を彷彿とさせる十字か、あるいはサルタイアーのような意味合いがある、のかもしれません。鐔はとても小さく、
鞘には柄と同じ黒革に曲線的なデザインの装飾が施されており、その上へ錆びた鉄線が巻きつけられています。どことなく「禁忌」「破戒」などのフレーズが浮かびます。「地下聖堂に潜む者」の名を体現する雰囲気は、かの有名ゲームを彷彿とさせると噂になったとかなんとか。そうでなくとも、他にはなかなか無い印象の刀です。
打ち直すと染色が可能になります。動画でもご紹介していますが、彩度は若干低いものの、比較的よく染まります。元のイメージを損なわない範囲ですから、ほかの装備を合わせやすいのはありがたいですね。個性の強めな一振りながら、さほどゴテゴテした装飾ではなく、割合シンプルなシルエットなのも好印象です。
この刀と同様に矢疵がある骨不知にて矢疵の解説をしておりますが、こちらでも。矢疵は、飛んできた矢を刀でカキーン!と弾いた際につきます。引き絞った弓から放たれる矢ですから、生半可な刀はポッキリ折れてしまいます。それに負けないだけの強靭さを持つ証なのです。
こうした疵はいろいろな種類があります。実用に差し支えの出るものがあれば、ちょっと見た目が悪いだけなものも。矢疵は実用性に影響はなく、美術品として鑑定される際にもプラス評価になりえる「誉れ疵」です。美術品と位置づけられるようになった現実世界の日本刀とは異なり、ハイデリン世界の刀は実用品ですから、鑑賞性はさほど重視されないかもしれませんけれどね。
2021/01/16 … 初版公開。
この記事へのコメントはありません。