1. 随筆
  2. 1450 view|最終更新 20/01/21

【第弐回】香川県のアレ。

なんだか長引きそうな様相を呈してきたため、シリーズ表記にしました。香川県議会が策定を企てている条例と、その問題点についてご紹介した第壱回は以下です。

そして、昨日の第 6 回検討委員会での内容が明らかになりまして。いろいろヤバいのは変わらずながら、中でも特にヤバいのをみっつピックアップし、最後にまとめます。全文や対照表は以下。

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例に関する資料の公開
→ 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)素案全文
→ 第 5 回素案との対照表

「努めなければならない」

各項で「行うものとする」→「行う」等と表現が強化されるなかで「努めなければならない」が盛り込まれたのは重大。これは法律の条文に用いられるフレーズで、「努力義務」を意味する表現です。

「努力義務」とは、強制ではないけれど守るよう努力してね!というもの。守れなかった (守らなかった) としても罰則はありません。なら無視してよさそうに思われがちですが、全く努力していない!と判断されると、行政指導を受ける可能性があります。努力義務違反は行政指導の根拠となりえるんですね。

行政指導に法的な拘束力等はありません。ありませんが、行政指導の名のもとに、いろいろできちゃいます。たとえば “ブラック企業” の社名公表等も、書類送検前の段階で行政指導として行われます。「この家庭はネット・ゲーム依存症対策をしていません」という情報を行政が入手、学校と共有して内申書に記載されたら?「○○先生のクラスは努力義務違反の生徒が○人なので改善してください」と指導が入ったら?

十分に縛り付けられます。イシュガルドの異端尋問官といい勝負です。(突然被弾する皇国

……第壱回にて「サラミ戦術」を例に挙げました。努力義務は、様々なケースにおいて、その初手に用いられています。男女雇用機会均等法、高年齢者雇用安定法など、最初は努力義務でした。まず努力義務として制定、行政指導で逐次カチコミをかけ「ご理解ご協力」いただき、頃合いを見て義務化してきたのです。

その端緒が、いまここに。

第 18 条の 3 ぜんぶ

保護者は、子どもがネット・ゲーム依存症に陥る可能性があると感じた場合には、速やかに、学校等及びネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等に相談し、子どもがネット・ゲーム依存症にならないよう務めなければならない。

上ともリンクしてきますけれど、特にやべぇのが「学校等およびネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等に相談し」の部分。つまり、家庭のゲーム利用状況を学校に相談しろ、と。

₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎馬鹿かな?

アッ!つい真っ直ぐな罵倒が!!これはいかん!!大変遺憾にござる!!機工士殿、遺憾砲発射でござる!!

……ただでさえ業務過多の教育現場に、予算も方策もなく「こういう取り組みするから相談窓口やってね」といえるのがビックリです。こういう条例を発表できること自体で既に激ビックリですけども。蒼天騎士にオネエがいるよりもビックリ。(再度被弾する皇国

だって、失礼を承知で申し上げますけれど、香川県に「ネット・ゲーム依存症に関連する業務に従事する者」はいらっしゃるんでしょうか。いたとしても、手近な相談先として学校が選ばれるのは火を見るより明らかです。業者選定の旨も書いてありませんし、つまり丸投げにも関わらず努力義務だけは負わせる。やべえ。

第 20 条の 2 ぜんぶ

この条例の規定については、この条例の施行後2年を目処として、この条例の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎くそやべえ。

端的にいえば「二年後にもっと厳しくします」です。県民の反応を鑑みて条例を撤廃!の可能性もありますが、香川県の蕎麦消費量がうどんを上回るのと同程度の確率でしょう。まさしく上で触れたサラミ戦術そのもの。

この条文、今回から追加されたんですよね。なにがなんでも議員側で管理支配したい意図を感じます。子どもはおもちゃじゃないよ。

このあとに県議選があるならまだ良いのですが、昨年やったばっかりなんですよねー。しかも香川県議は 2/3 が無投票当選という惨憺たる状況。つまり、今回制定されてしまえば、2 年後、昭和老人たちのさらなる時代逆行に付き合わされます。のみならず、なり手がいないだけでなく、未来のなり手を根拠もなく痛めつけようとしているわけで。現時点でも、こんな条例を制定せんとするセンセ方に税金を納めておられる香川県民を思うと、もう気の毒で気の毒で。骨付鳥も喉を通りません。

問題点まとめ

「依存症を防ぐ」という目的は非常に素晴らしいもので、価値のあることです。しかし、疾病として認定されたのが直近かつ体系だった治療法も確立されていない現状、義務を伴った規制を設けるのは勇み足に過ぎるのではないでしょうか。まして、科学的根拠のない主観に偏った議論 (親子関係や愛着など) に依拠するのは、問題を解決から遠ざけるとすらいえます。

ネット・ゲーム依存症を恐れるがためにすべての子どもから選択を奪うこと、世界保健機関の定義ではなく根拠を伴わない独自定義をもちだすこと、エビデンスに乏しい決めつけで話を進めること、ひとつひとつ違う親子の形や子どもの個性を無視した一律規制であること、一般人ですら思いつくようなこれら問題点の議論すらできていないセンセ方を支える香川県民の心労、えとせとらえとせとら。

……問題山積というよりは、理念以外は問題しかないというのが正しいです。多少は態度の軟化や条例の簡素化などあるかと思いましたが、まさかの硬化。あるいは、外部からの反対の声というだけで「ネット・ゲーム依存症たちの不当なバッシング」に思えているのかもしれません。だとすれば、23 日から予定されているパブリックコメントも形骸化しそう。

なんとも雲行きが怪しいですが、引き続き本件は追っていきたいと思います。拙者からは以上!!

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