1. 随筆
  2. 392 view|最終更新 20/04/16

「後ろです!」

興味深いお話を拝見し、アンサーというわけではありませんが、記事を受けて「私はこう考えている」を書き出してみるのも一興かと思い、言語化に挑んでみました。

前提のおはなし

ぜひ元記事を御覧いただきたいのですが、概要を端的にご説明。深く考えず、感覚で回答してください。

とある討伐戦にて、エネミーが攻撃の構え。その瞬間「後ろです!」と言われたら、あなたはエネミーの “前” と “後ろ” のどちらに避けますか?

せっしゃ「後ろに避けるでござる!」

これ、どちらも正解です。問いの文は、後ろが安全地帯なのか攻撃範囲なのかが抜け落ちています。

「(安全地帯は) 後ろです!」

「(攻撃範囲は) 後ろです!」

正反対の結論を導く解が双方に成り立ってしまいます。渋谷駅で待ち合わせする恋人のように、双方正しいのにすれ違い。出口番号 20 個はやめてほしい。階段もないワンフロアに B3F 出口と B2F 出口を設置しないでほしい。さておき、以下のように 8 割近くが「後ろに避ける」と解答しました。なぜか。

https://twitter.com/HawkLazy/status/1240111172810088450

判断の少ない選択肢を好ましく思うから

人間、判断の数が少ないほど正確な動作ができます。判断の回数や頻度が増えるほど、質は低下していきます。いわゆる決断疲れと言われますね。スティーブ・ジョブズが常に同じ服で判断数を温存したのも、モノの少ない空間であれば認知判断が抑えられて頭がスッキリするのも、そういった関連です。

後ろが安全地帯だと判断したなら単純に後ろへ移動するだけですが、後ろが攻撃範囲だと受け取った場合、その次に「前に避ける」の判断が必要です。つまり 1 ターン多く判断するため、積み重なると判断数が嵩みます。ゆえ、無意識的に判断数が少なくなるよう認識する人が多いのではと考えます。結果、咄嗟の断片的な情報は判断数が少なくなるよう補完するし、後述の通りそれが有効な環境が整えられるのだと推測します。

もちろん互いに排他ではなく、両立併用が可能です。それでも、様々なものを効率化し、望む形に嵌め込んできた人類の、ある意味で進化の一例……というのは少し大げさにござるな!

最適化の結果

タンクとヒーラーでも、「後ろに避ける」派が多数です。実際、最終的にはそのほうがロール問わずリソースの節約になります。いずれのロールも人間がやるものだから。……たぶん。さておき、タンクやヒーラーは自分や自分が関わるエネミー行動を把握した後に対処するロールであり、最適化の前段階でギミック機序を習得する必要があります。ゆえ、まず攻撃範囲や被ダメージ量を把握するため、判断リソースをギミックの挙動に向けることはあるでしょう。

その時点でごく単純に「うしろ!」と言われ、深い判断を挟まなかった場合、そこが攻撃範囲と認知……つまり前に避ける。無論、体に染み付いた反射があったり、もっと純粋に後ろに動く等もありえますけれどね!

なら「前に避ける」派は習得中の不慣れなプレイヤーの専売特許かというとそんなことは全くなくて。むしろ事象把握 → 行動決定のフローゆえ、熟達すれば「後ろに避ける」派よりも確実堅実な立ち回りが可能です。特にランダム性の強いギミックでは、この思考回路があるか否かで成功率に雲泥の差があらわれます。零式ケフカのような「○○だから××」の複数組み合わせなどは好例でしょう。直近では零式シヴァのダイヤモンドダストや光の暴走も該当しそうですね。

「トレース」であるがゆえに

しかしながら、そのアドバンテージが活きる場面に乏しい環境なのも確か。というよりは、既に「安全地帯を記憶するほうが効率が良い」と学習した人々が多数であるため、求められる解法、あるいはコンテンツ自体の方向性がそれに寄ってきます。先行者を「トレース」するのであれば、機序の理解はほぼ不要です。求められる情報は、その攻撃の安全地帯はどこか、どこへ動けばいいのか。ゆえに「後ろに避ける」。

そうして判断を減らして最適化すればミスを減らせるし、スキル回しや攻撃に注力できます。不意のミスはどうしても発生するけれど、頑張って取り返すよりも仕切り直して再スタートがいいよね、なんてスタイルが尊ばれる環境が醸成されていったのではと考えるのです。……すこし小難しく書いてしまいましたが、つまり、いろいろなものが「効率」に引っ張られているし、それは仕方なくもあるよね、ということ。

そのうえで

まとめると、

・不十分な声掛けでは解釈が分かれる
・判断の数を減らす方向に人々は最適化されがち
・だが、それはあくまで多様性のうちの一つである

リンク先にて Lazy さんが言及されている通り、コミュニケーションが重要です。より厳密にはコミュニケーションスキル、伝え方。冒頭でお話した通り、断片的で要素の欠落した情報は誤解の元です。戦闘開始直前の僅かな時間で、簡潔かつ齟齬がない伝え方とは。

私の場合は「ボス前方攻撃!」「ボスのドーナツ攻撃!」「ボスから離れる!」など、○○攻撃&位置関係を意識しています。つまりこれ、敵が基準の表現です。冒頭の回答 2 パターンのうち、後者。矛盾に感じられるかもしれませんが、アドバイスとは、理解してもらうためにする行為です。正解してもらうのは理解のつぎ。そのためには、前提と過程を示し、結末に辿り着いてもらうのがベターなのです。当初設定された「不十分な声掛け」の主題からは外れてしまうけれど、明確に理解できる声掛けがだいじ。

助け舟を出そうとしてトドメを刺すのは悲劇であり喜劇ですが、うまいこと切り抜けてガッツポーズでハイタッチしたいものです。そのためには、自分の考え方や感じ方がすべてと思わず、できる範囲で想像を巡らせていくこと。そして、想像できる範囲を拡張していくことが大事なのかなと思います。それは巡り巡って自身の価値観や立ち回りに変化を生み出し、恩恵をもたらしてくれます。情けは人の為ならず。視野を広げ、ニ人三脚、もとい八人九脚で楽しんでいきたいですね。

結論:
いけふくろう前で待ち合わせするカップル爆発しろ。

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コメント

    • 名無しの冒険者
    • 2020年 4月 16日

    タイトルをみて、志村うしろ!を思い浮かべた人が
    攻撃がうしろからくると思った人
    状況をふまえた上だと、うしろが安全地帯だと思った
    ところで、安置は何の略でしょうか?

      • 松乃雪
      • 2020年 4月 16日

      幽霊ではなくウソウソがおりました……₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎本記事内の「安置」についてはこっそり修正しておきました、ありがとうございます!安全地帯の略 = 安地で、誤字でございます_(┐「εx)_ 〜( ε¦) 0
      リンク先のアンケートについてはお目溢しいただければと思います( ˊᵕˋ )

    • 通りすがりのヒカセン
    • 2020年 4月 16日

    今回のテーマについてですが単純に「後ろです!」と言われたら
    攻撃範囲とかボスの位置とかではなく、自分が今いるところから後ろに向かって動きますね。

      • 松乃雪
      • 2020年 4月 16日

      なるほど確かに!事前情報や幾ばくかの経験もない状況で、より純粋にチャット欄だけを見て反応した場合、おっしゃるような反応も十分考えられますね!
      言い換えれば、本記事は「何度か攻撃を受けた結果『安全地帯はどこだろう?』の意識が芽生えている状況でのお話」といえるのかもしれません。

    • ぷりにぃ
    • 2020年 4月 16日

    非常に興味深く、それでいて言葉の難しさを痛感する話だと思いました。
    ニポンゴ、ムツカシイネー。オサムライサンスゴーイ。

    アンケートの条件のように自分が初見+完全未予習だったとして(ついでに自分自身は白&学メインなのでヒーラーと仮定して)、同条件下で他のPTメンバーの方から「後方です!」とチャットされた場合。
    正直に白状すると、あのアンケートの選択肢では回答不可能です。何しろ”その瞬間の自分”がどう判断するか分かりません。
    何ならテンパって棒立ちになる可能性すらあります。

    かなり卑怯な回答ですが、強いて言うなら「周りのPTメンバーの動きに合わせる」という選択を取ると思います。恐らくアンケートの選択肢の中では上2つの両方。それこそ記事中でも述べられている先行者の「トレース」そのものです。
    というのも、初見未予習では他に判断材料が無く、悠長にチャットで質問する猶予も無さそうだからです。
    前方!?後方!?分かんないぞ!でも攻撃飛んでくる!あっなんかみんな集まってる!じゃあ自分もそっちn(ドーン)

    ヒーラーの場合は他のPTメンバーの方に回復を行き届かせるため、立ち位置の把握に神経を使わざるを得ません。
    「後方です!」のアドバイスが指し示す後方がどの方向を示すにせよ、立ち回りが分かっている方であれば大なり小なり似たような動き、似たような立ち位置になるはずです。自分はその動きに合わせる。
    誰から見て前方なのか?誰から見て後方なのか?
    質問するのは簡単ですが、恐らく被弾する方が早いでしょうね。
    記事中で松乃雪さんが述べられた「ボス前方」のように、◯◯を基準にして△△方向…という要素をしっかり揃えると瞬時に分かりやすいのかなと思います。

    チャットを用いたコミュニケーションは、オンラインゲームの特徴であり華だと思います。
    無事クリアして全員笑って帰るためにも、せめてその場で一緒になった方とのコミュニケーションくらいは円滑に行いたいものですね。

    えーっと、新宿駅のインフォメーションセンターはどこだ…?

      • 松乃雪
      • 2020年 4月 27日

      判断猶予がない場合、認識の齟齬は致命的になりがちで、よかれと思ってやったことが残念な結果になったりしがち(:›_ヽ)_
      どちらかといえば今回の設定は思考実験に近く、実戦ではお目にかからない可能性は高いですが、こういうことを考えるのは楽しいですね!ここはどこだ!どのなんば駅だ!

    • 慣れっこのゴージ
    • 2020年 4月 16日

    オチが秀逸w
    自分は基本戦士一筋なので、もう被弾して死にかけそうな(HPゼロ確定なPTメンバーは除く)に、ボスへのアンカー残しつつターゲット→猛りの準備までしてます、
    最近はS5の、危機的状況からのリカバリーに快感を覚える始末。
    もっとも、ヒーラーさんありきの、立て直しなんですけどね。
    感謝、感謝!

      • 松乃雪
      • 2020年 4月 27日

      タンクさんは一部アビリティで味方を守ることができ、うまくいったときは爽快感がありますよね◝(⁰▿⁰)◜ブラナイでカバーできたときはドヤ顔をする拙者でござる。
      ヒーラーさんに過剰な負担をかけないようにしつつ、お願いすることになってしまった場合には、ごめんね&ありがとうを伝えていきたいですね₍՞◌′ᵕ‵ू◌₎

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