(溺れた海豚亭にて)
ムソウサイ:
待っていたぞ、Yuki殿。お主の刀を差した佇まいも板についてきたな。「うるだは」の悪を討ったことで、侍の風格が出てきたようだ。
さて、この潮の香り漂う都で、悪を探っていたところ、「いえろうじゃけっと」と申す者たちに捕まりかけてな。聞けば、この街で連続殺人事件が起きているというではないか。
被害者は皆、鋭利な刃物で斬り付けられていたもので、腰に刀を差していたワシが、犯人と疑われてのう……。
モモジゴの証言で事なきを得たが、遺体を検分させてもらったところ、確かに刀傷が残されておった。もしや、我らと同じ侍の仕業……?
無暗に殺生を繰り返すとは、刀を持つ者にあるまじき所業。この事件の犯人こそ、この都の討つべき悪とみた。侍の大義にかけて、悪を許さず!
モモジゴ:
よーし、犯人捜しといこう。なんだか、わくわくしてきたぞ……。さっそく、人が集まる「国際街商通り」で、事件の情報を集めようぜ!
(国際商通りにて)
スヴォズブレート:
連続殺人事件?ああ、この国際街商通りでも、もっぱらの話題さ。なんせ、被害者に馴染の客がいたもんでね、早期解決を望むよ。
キョキョルン:
連続殺人! 怖いっちゃ!だって、キキルン族もやられたっちゃ!がたがた、ぶるぶる、夜も眠れないっちゃ!
モモジゴ:
イエロージャケットに捕まったときは、そら大変だったよ。刀を差した東方風の爺さんなんて、いかにも怪しげだもんな……。
ムソウサイ:
うーむ、被害者の共通点とは……?
ベーンシング:
あの事件のことを聞きたいのかい?酷い話でね、この街に寄った旅人まで殺されたんだ。いったい、何の恨みがあってそんなことをするんだろうか……。
ムソウサイ:
市場の馴染客と旅人、そして「ききるん族」か……。被害者に共通点は見受けられぬようだ。
こちらが集めた情報では、被害者は皆、船着場付近で行方がわからなくなって、遺体で発見されている。
ふむ……犯人は無差別に、桟橋を通りがかった者を殺していると見た。
モモジゴ:
通り魔ってやつか、恐ろしいねぇ……。だが、そうなってくると、どう犯人を捜せばいいんだ?
ムソウサイ:
ここは、囮を仕掛けるというのはどうだ。人通りの少ない深夜の桟橋を歩き回り、犯人を誘き寄せて、ひっ捕らえるのだ。
モモジゴ:
そいつはいい考えだ!で、誰が、囮となるんだい……?
(ふたりに見つけられるモモジゴ)
ええっ! 俺っ!?
な、なんでまた、俺なんだよ~!
ムソウサイ:
被害者に共通点はないと言ったが、不思議と、この街に多い海賊連中は含まれておらん。つまり、武器を持っていない者だけが狙われたわけじゃ。
ということで、腰に刀を差しているワシも、Yuki殿も、囮役は務まらん。いやはや、残念至極である……。
臆するな、犯人が現れたら、すぐにワシらが捕えてやる。それでは、「船着場」の方へ向かうとしよう。
(船着場にて)
モモジゴ:
ああ、なんでまたこんな目に……。くわばら、くわばら……。
ムソウサイ:
しからば、いい頃合いになったら、作戦開始といこう。
モモジゴ:
で、で、で、出たァァァァ~ッ!!
(モモジゴの爆音絶叫により遁走する下手人)
ムソウサイ:
むう、あの刀は……。
ひっ捕らえる間もなく、犯人に逃げられてしまったな……。お主の悲鳴に大層たまげたようだ。
モモジゴ:
め、面目ない……。
ムソウサイ:
まあよい、実はあやつが持つ刀に見覚えがあってのう……。祖国の港街クガネでは、「えおるぜあ」から来た豪商が、銘刀を買い漁っていると、たいそう噂になっておった。
立ち寄った小鍛冶の店先で、売約済みになっておった刀に、あの一振りに似た銘刀があったのを思い出したのだ。確か買い手は、「ららふぇる族」の豪商という話じゃったが……。
モモジゴ:
この辺りのララフェル族の豪商といえば……ゲゲルジュさんだ。俺は踊り子の興行でお世話になったことがあるけど、あの人がそんなことを……?
ムソウサイ:
該当する者がいるのだな、その者を追究してみよう。して、どこへ向かえばいいのだ?
モモジゴ:
ゲゲルジュさんは、「コスタ・デル・ソル」に住んでいるよ。何かの間違いだと思うけどなぁ……。
(コスタ・デル・ソルにて)
ゲゲルジュさんは、下衆なところもあるけれど、それは、ほら、あっち方面のことだからなぁ……。
ムソウサイ:
さあ、単刀直入に、この者を追究してみよう。
ゲゲルジュ:
ワシのまどろみを邪魔する者は誰じゃ……って、あなたは?三大珍味を集めてくれた冒険者殿ではないか!
きょ、今日はまた、東方の者まで連れだって、いったい、どんな用件で参られたのじゃ?
(ゲゲルジュに経緯を説明する)
なるほど、ワシに連続殺人の疑いがかかっておると……。もちろんそれは間違いじゃ、ワシは潔白である。じゃが……犯人に心当たりがあるぞ。
それはきっと、「グルミ・ボルルミ」の奴であろう。貿易で巨万の富を得て、悠々自適に暮らす道楽者じゃ。そいつは、東方の物のコレクターでな、特に刀を集めておる。
こないだも、由緒ある銘刀とやらを自慢しながら、人を斬ってみたいとぼやいておったが……まさか実行するとはな。昔から趣味の悪い奴だったものの、ついに一線を越えよったか……。
ムソウサイ:
その者で間違いなさそうだな。おのれ、道楽で人を斬るとは、まさしく鬼畜の所業……。
ゲゲルジュ殿、一度は疑ってしまったこと、誠にあいすまぬ。どうか、その不届き者の居場所を教えてもらえぬか?
ゲゲルジュ:
奴は船に住んでおってな、しばらくはこの辺りに投錨していたが、そろそろ、場所を変えるとか言っていたのう。
モモジゴ:
船か、乗り込むのは難しそうだな。でも、今逃してしまうと、もっと困難なことに……。
ゲゲルジュ:
ぬほほほほ、ちょうどよかったのう~。実はワシのもとに、そのグルミ・ボルルミから、船上で開かれる「宴の招待状」が届いておったところなのじゃ。
冒険者殿に借りを返すためにも、その招待状をやろう。船着場で待っている、「グルミ・ボルルミの従者」に渡すがいい。
そこの興行師にでも、ワシの変装をさせれば、気付かれずに、他の者も従者として船に乗り込めるであろう。奴は厄介な商売敵でもある、片付けてもらえば、こちらも助かる。
ムソウサイ:
かたじけない、恩に着る。では、モモジゴには変装をしてもらい、船着場へと向かおう。
モモジゴ:
もしかして……また、俺が危険な目に遭うんじゃないか……?
(ゲゲルジュに変装したモモジゴ)
ぬほほほほほ、船上の宴とはまた、高まるのう~!……似てる?
ムソウサイ:
なかなか、風光明媚な眺めじゃな。紅玉海を思い出すわい……。
グルミ・ボルルミの従者:
これはこれは、ゲゲルジュ様のお付きの方ですね。それでは、招待状を拝見してもよろしいでしょうか?
……確かに。それでは、グルミ・ボルルミ様の船へとご案内します。
(グルミ・ボルルミの船内にて)
媚びへつらう招待客:
さすがはグルミ・ボルルミ殿!宴も東方の趣向を凝らしていて、実にお見事!
グルミ・ボルルミ:
ホッホッホ、こんなものは大したことない。さて、自慢の刀のお披露目といこうかのう……。
これは、ゲゲルジュ殿……よくぞ、いらしてくださった。おやおや、貴方も東方の侍風の用心棒を、雇われたようですな!
それは、結構、結構。しかし、私の刀のコレクションにはかないますまい!
ムソウサイ:
罪なき人々を斬った刀を見せびらかす気か……?鬼畜の沙汰も、ここまでだ。
グルミ・ボルルミ:
お主、ゲゲルジュではないな……?しかし、どこかで……。
モモジゴ:
アンタに斬り殺されかけた者だよ。忘れたとは、言わせねーぜ!
グルミ・ボルルミ:
そうか、あの夜の……。フフフ、刀というのはな、眺めるだけより使うほうが、何倍も愉しめると気付いてしまってのう……。
ムソウサイ:
外道め……もはや縄をかける気も失せた。……斬捨御免。
グルミ・ボルルミ:
善良な市民の宴に押しかけて、脅しをかけるというのか?よかろう、私の用心棒と手合せしてもらおう。余興には持ってこいだ……表へ出よ。
(甲板にて)
出あえ、オスティルグレイン!
ムソウサイ:
……刀の握り方がなっとらん。格好だけの偽者と見た。
オスティルグレイン:
偽者も本物もあるもんか。侍ってのは、刀を持った剣術士のことだろう?俺は剣術を極めたんだ、この銘刀の斬れ味を試してやるぜ。
ムソウサイ:
やれやれ……。Yuki殿、本物の侍の違いを見せてやろうぞ。
グルミ・ボルルミ:
いや待て……すぐ終わってしまってはつまらん。お主の出番は最後にとっておこう。うってつけの前座を呼んでやる。
さあ、我らは高みの見物といこう。
ムソウサイ:
ほう……ではワシも下がるとしよう。偽者どもなんぞ、Yuki殿、お主ひとりで充分じゃろう。
グルミ・ボルルミ:
者ども、この曲者を斬り捨てぇい!
(バトル開始)
さあ、せいぜい余興を盛り上げてくれい!
ホッホッホ、なかなかやるではないか。それでは、私の可愛いペットを放ってやろう。
ヴァナラちゃん、エサの時間ですよぉ!
むう、魔物を放つとは卑怯な……。あのケダモノは、お主に任せた!
エセ忍者どもは、ワシが片付けよう……参る!
そのケダモノは、動作が鈍い、動きをよく見て避けるのだ!
いいぞ、その調子じゃ!
わ、私の可愛いヴァナラちゃんが……!
お、おのれ、こちらも侍の出番だ!
さあて、ぶった切ってやるかぁ……。
真打ちの登場といったところか。どうせ、そやつは刀の握り方も知らん偽物じゃ……。
中途半端な侍かぶれの剣術士なんぞ、相手にもならんわ。
だ、黙れクソジジイ!
見せてやるよ、侍の技ってやつを!
なんという大ぶり……見るに堪えん。
当たるわけなかろう、止まって見えたわい。
これでも食らえっ!
目潰しとは卑怯な!
うるせえ! 勝てばいいんだ! 勝てばよぉ!
クソッ! こうなったら……奥の手だ!
刀で戦うことすら放棄するとは……。侍はおろか、剣術士の誇りすら捨てたか……。
バカな……この俺が……負けるとは……。
ぜ、全滅だと……?かくなるうえは……逃げるが勝ち!
逃がすものか! あやつを追うぞ!
(バトル終了)
(波止場に追い詰められるグルミ・ボルルミ)
ムソウサイ:
やっと追い詰めたぞ。
船を捨ててまで逃げおって、この卑怯者めが……観念せい。
グルミ・ボルルミ:
わ、私の部下を全滅させるとは……。お主ら、いったい何者……?
ムソウサイ:
我が名はムソウサイ、そして、この者は我が弟子Yuki殿。人の姿をした浮世の鬼に、天誅を下しに参った侍である。
グルミ・ボルルミ:
ムソウサイ……どこかで聞いたような……。ハッ、東方で刀を買い付けるときに聞いた、伝説の剣豪の名ではないか! どおりでかなわぬわけだ……!
え、ええい、いくら剣豪といえども、私の持つ銘刀の切れ味にはかなうまい……!
お主もこの刃の餌食となるがいいッ!!
ムソウサイ:
罪なき人々を殺めておいて、反省の色ひとつないとはな……。よんどころなし……斬る。
(ムソウサイの居合が一閃)
ムソウサイ:
このような者、Yuki殿には斬らせたくもない、ワシの務めじゃ……。
さて、思わぬエセ侍との戦いになったが、冒険者殿にとっては役不足であったろうな。
侍にとって、最もよい修行となるのは、実力が拮抗する侍と、剣を交えることなのだ。しかし、この地には、なかなかおらんのが難点じゃのう……。
モモジゴ:
ふう、解決したね。それにしても、爺さん、アンタすげー人らしいな?
ムソウサイ:
なあに、昔の話じゃ。今は気ままな、隠居の老いぼれよ……。
ゲゲルジュ:
グルミ・ボルルミの奴を片付けてくれたか。越えてはならん一線を越えたのだ、当然の報いよの……。
この後始末は、任せておくがいい。ワシの私有地で起こったこと……外には漏らさぬ。
ムソウサイ:
何から何まで、かたじけない、恩に着る。
これにて一件落着。悪の蔓延る世は栄え……
(膝をつくムソウサイ)
モモジゴ:
爺さんっ! 大丈夫かっ!?
ムソウサイ:
ああ……案ずるでない。少し、疲れたまで……歳は取りたくないのう……。
さあ、次の都へ向かおう。風の向くまま、気の向くまま……。
ほう、どうも森の方に風が向いているようだ。モモジゴよ、森の都へと参ろうぞ。
モモジゴ:
森都といえば、グ、「グリダニア」か。あそこは……まあ、いいや、向かおうか。
(カーラインカフェにて)
モモジゴ:
ハ、ハハハ……あ、相変わらずいい街だね。
ムソウサイ:
森と調和した、素晴らしき街ではないか。しかし、そんな街にも隠れた悪はいるもの。ワシらが探り当てるまで、お主は己で鍛錬を積んでおいてくれ。
モモジゴ:
さ、さっそく、俺、この街の悪を探すため、情報収集に行ってくるよ~!
この記事へのコメントはありません。