一際目を引く大金物を備えた鞘、赤銅色の地鉄が特徴的。刃文は逆丁字と珍しく、刀自体のサイズ感もあいまって、豪快な印象を受けます。金物にも鍍金が施されており、華やかな一振りです。
造 … 鎬造。
刃 … 大ぶりの逆丁字。
柄 … 黒平巻
、赤鮫皮、出目貫。
鞘 … 黒塗木、中程から石突まで大金物。
鐔 … 菱形、風巻の意匠?
IL/Lv … 279/66
絡繰 … なし
染色 … 不可
入手 … 製作/NPC販売/クエスト
備考 … たまはがねたち。
美しく、それでいてどこか芯の強さを感じさせます。黒・金・紅のトリコロールになっているのもその一助でしょうか。まるでバラの花がごとき美と棘を感じさせる佇まいです。鞘と柄巻は黒、柄頭と鐔から石突にまで及ぶ大きな金物には鍍金が施され、金物に嵌め込まれた宝玉や鮫皮や刀身は紅を湛えます。
特に刀身の色味は印象的ですが、なにゆえこの色なのかは不明です。ふしぎ!同じく玉鋼を使用した武器や道具に赤色の表れているものはありません。しかしあるいは「クリスタル製作」の演出上省かれているだけで、玉鋼太刀だけは他の玉鋼武器と異なり鍛刀作業を経ており、その結果こうなっている……なんてのは、ご都合主義すぎますかね!
鐔は菱形で、渦巻く風のような意匠に思えます。前後に少し長めなので、慣れるまではお腹にぶすっとしてしまいそう。柄巻は赤い鮫皮に黒の糸か革で巻いており、目貫が柄巻の上にある出目貫となっています。
なんというか、黒渦団の制式刀であってもおかしくなさそうです。
「玉鋼」とは、日本の伝統的な製鉄方法「たたら製鉄」により作られる金属です。映画もののけ姫で、女衆がエイヤサーしていたところにアシタカきゅんがドコーン踏んでキャーされていたアレです。(表現力
名称および製作素材からわかる通り、それを用いて作られた太刀となります。
たたら製鉄は二種類あり、玉鋼を生産するのは「鉧押し法(けらおしほう)」。大きな囲い状の土釜を作り、そこへ真砂砂鉄と木炭をアホ程ブチ込み(表現力)、三日三晩火を絶やさずに行われるものです。これに使う木炭を工面すれば、軽く山一つが禿げ上がるとか。
そして作業中、村下(むらげ)と呼ばれる総責任者は一睡もせず、刻一刻と変化する炉を、空気を送り込むために設けられた孔から見つめ続けます。……燃え盛る溶鉱炉を、間近から。ゆえに職業病として片目、終いには両目を失明したといいます。製鉄の神として祀られる天目一箇神が片目なのはそのためとも。
また、玉鋼はたたら製鉄でのいわばHQ品であり、砂鉄10t・木炭10tを投入して採れる玉鋼は1t未満。しかも一度使用したら窯は取り壊し。それほどのコストが掛かっているのです。
一方のエオルゼア。餅鉄+鉄鉱で卸し鉄(おろしがね)を作り、卸し金と真砂砂鉄(まささてつ)4つをトントンすると玉鋼が完成。一瞬。クリスタル合成バリヤベェですが、もうひとつのたたら製鉄法、一旦素材となる鉄を作ってから行う「銑押し法(ずくおしほう)」とのハイブリッドっぽくもあり、ヒカセンガチヤベェですね。
ちなみに銑押し法で使うのは赤目砂鉄(あこめさてつ)。こちらは千種鋼(ちぐさはがね)の原料であり、現実世界も同じです。さらに言えば、上述してきた出雲方面で製鉄されたものを出羽鋼(いずははがね)、現在の兵庫県宍粟市あたりに存在した千種村周辺で製鉄されたものが千種鋼と呼ばれました。
江戸の頃には鋼の二大ブランドとされ、質で勝る千種鋼、コスパで勝る出羽鋼、との評価だったようです。背景には、大型化・大量生産体制を採った出羽鋼と、質に拘った千種鋼の構図があるとか。しかし、千種鋼も色気を出して大量生産に傾いた結果、後期には質が落ちてしまった……なんてお話もあります。
その後、廃刀令や近代化の影響で、たたら製鉄は壊滅に追い込まれます。日本で唯一生き残ったのが出羽鋼で、千種鋼は断絶。現実にはいまや幻となってしまった千種鋼ですが、エオルゼアの地には息づいており、いつかこれを使った刀が生まれ、この玉鋼太刀と並び立つ日が来るかもしれませんね。
2019年6月10日 … 初版公開。
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