1. 刀剣目録
  2. 4808 view|最終更新 20/08/20

[刀剣目録] 大包平

動画
静画(ミラプリ/染色例含む)

寸評

現実世界では「日本刀の最高傑作」とまで称される逸品も、エオルゼアでは少々来歴が異なるようです。とはいえ、いずれも業物と呼ぶにふさわしい豪壮な一振りで、刀身は美しいグラデーションを湛えます。特に真打は歴史的に重要な存在とされ、一線を画する存在といえましょう。

形状

菖蒲造
乱刃
… 十字、菊花の意匠。
… 黒塗木、柄巻と鮫皮なし。
… 札板 (ざねいた) の組み合わせ?

仕様 ※()が改、<>が真打の性能。

IL/Lv … 170/60 (180/60) <282/67>
絡繰 … なし (なし) <なし>
染色 … 不可 (可) <不可>
入手 … NPC交換 (NPC交換) <バトル>
公式 … 大包平 (【改】) <【真打】>

検分

本記事では「大包平(無印)」「大包平【改】」「大包平【真打】」を一挙にご紹介します。銀色に近いのが無印、金色に近いのが【真打】です。【改】は染色可能なだけゆえ、無印の説明に含まれます。


まず最初にお伝えしておきますと、現実世界の大包平とは別存在、あくまでエオルゼア世界で「大包平」と呼ばれる刀です。現実の大包平は大鋒の鎬造ですが、エオルゼアの大包平は菖蒲造です。しかしながら、エオルゼアにおいては菖蒲造に優位性があると考えられるため、後述する来歴も踏まえれば然もありなん。


特徴的なのは、刀身の色味。地鉄がグラデーションとなっており、一体なんの金属を使って打たれたのか、皆目見当がつきません。塗装でも合金でもなく……鍛刀時の酸素含有量などに起因する変化にしては、余りにも鮮やかで大胆です。あるいは、いまは産出が途絶えた古の玉鋼かもしれませんね。また、滑らかな軌跡で刀身に彫られた樋は、水墨画のような美しさを醸し出しつつ、実戦的な性能も窺い知ることができます。ちなみに、現物の大包平にも樋があります。おそろい!


鐔は十文字型で、菊の花が象られています。図案としての正式名称は「十二葉一重菊」となるでしょうか。左右と裏表の四箇所に描かれています。柄は黒塗りの木が裸で取り付けられており、柄巻も鮫皮もないようです。滑りやすそうに思えますが、あるいは滑り止め効果のある塗料を使っているのかも。



鞘は独特で、小さなパーツを繋ぎ合わせて形成されています。当世具足の板札に構造は近いでしょうか。だとすれば、刀だけでなく、鎧兜の製法まで用いて作られたといえます。当時の技術の粋を集めた一振りなのかもしれませんね。作刀が古い時代ゆえか若干の痛みが見られますが、それもまた味。【改】で染色をすると、各所の紐がその色に染まります。

現実世界の大包平と比べれば相違点は多く、レプリカや再現を期待された方には肩透かしかもしれません。特に刀身の長さは「少し小さめの太刀」程度であり、ギャップは大きいといえるでしょう。しかしながら、エオルゼアの大包平にも上述してきたような特徴や美しさがあります。その妖しい光沢に惚れ込んでそばに置くもよし、現実世界との違いを味わいながら佩くもよし。自分なりに愛でていきたいですね!

逸話


この刀には公式設定があります。

ひんがしの国で造られた初期の名刀。この一振りが大陸に渡ったことで、ドマでも刀の有用性が認められ、製造法が広まることになったという。したがって、ドマにとっては優れた刀であるだけでなく、歴史的意義をも併せ持つ。 – Encyclopedia Eorzea II P.200

現実世界においては、武家勢力の拡大にあわせて日本刀は広まり、日本では定着したとされます。ただし、多くの人々がイメージするであろう、反りがついた「日本刀」の成立初期……平安時代……つまり宋代中国にて、有名な吟遊詩人の欧陽脩が「日本刀はスゲェ!(でも書経はもっとスゲェ!)」と歌っています。詳細は以下の折りたたみにて触れますが、それをモチーフとしたエピソードかもしれませんね。

「日本刀歌」の原文と現代語訳と読解。

【原文】
昆夷道遠不復通 世傳切玉誰能窮。
寶刀近出日本國 越賈得之滄海東。
魚皮裝貼香木鞘 黃白閒雜鍮與銅。
百金傳入好事手 佩服可以禳妖凶。

傳聞其國居大島 土壤沃饒風俗好。
其先徐福詐秦民 採藥淹留丱童老。
百工五種與之居 至今器玩皆精巧。
前朝貢獻屢往來 士人往往工詞藻。

徐福行時書未焚 逸書百篇今尚存。
令嚴不許傳中國 舉世無人識古文。
先王大典藏夷貊 蒼波浩蕩無通津。
令人感激坐流涕 繡澀短刀何足云。

【現代語訳】※あくまで参考にね!
昆夷には宝玉をも切る名刀があると伝わるが、行き来出来ないほど遠く、確かめた者は誰もいない。
ところが最近、の商人が日本から (昆夷刀を凌ぐような) 宝刀を手に入れてきた。
それは香木の鞘に鮫皮が巻かれ、真鍮と銅を折り混ぜて飾られている。
大金を払い、これを好事家が買い求めた。身につけると悪魔や凶事を祓うという。

伝え聞くところによると、日本は大きな島であり、土地は肥沃で風俗は好いという。
徐福は不老不死の薬を得ると民を騙し、日本に留まったため、ついていった民は老いてしまったが、
各種の工匠と五穀の種子のおかげで、日本で作られる道具は皆精巧になった。
唐代には貢物を献じてきて往来があったため、日本の地位ある人達は詩や文章を作るのが巧みである。

徐福が渡った頃は焚書が行われていなかったので、中国では失われた百篇が、日本には存在する。
日本は法が厳しく、中国に伝えることが許されないため、今の中国で古文を識ると言える人はいない。
先王が編纂した宝典が異民族の国にあり、大海原は果てしもなく広く、渡るすべもない。
これを思うと、ひとりでに涙が溢れてくる。錆びた短刀などで、宝典に代えることなど出来ようか。


【意味】※あくまで参(略
日本刀を評価したうえで、宋代文人が喉から手が出るほど求めた「書経」と対比しています。書経と比べれば、いかに宝刀と呼ぶべき日本刀も「錆びた短刀」に等しく、ぼくは書経がほしいの!輸出して!もー!みたいな詩です。当時の日本に書経が実在したかは詩的表現の域を出ないものの、そう歌われるほどだったというお話。

日本刀は書経の引き立て役ですが、逆に言えば「書経と比較されるほど」とも言えます。もちろん、日本刀を良く言えば言っておくほど、書経の価値もより高くできる構図ですけれどね!ともあれ、当代で著名な詩人が言及したことにより、日本刀ひいては当時の日本人の歴史観にまで影響を及ぼしたとされます。冒頭の設定とも結構似ているように思えますが、いかがでしょう!

余談ですが、日本刀は周辺国から「倭刀」と呼ばれ、製法の習得や再現が試みられました。が、折り返し鍛錬の会得には至らず。ハイデリン世界では、現実世界と異なり大陸側 (ドマ) に製法が伝来しているため、このあたりはオリジナル設定といって良さそうですね。

そして、この一振りが評価されたために「刀」という文化そのものが伝播したとされます。繊細かつ大胆な色味の刀身と樋が織りなす妖しくも美しい輝き、鍛刀のみならず防具製作の技法すら取り入れた珠玉の逸品ともなれば、そりゃあ周辺国には衝撃だろうなぁ……というのは、ちょっと贔屓目でしょうか!

入手場所について


大包平はイシュガルドでの交換、【改】はイディルシャイアでの打ち直し、【真打】は「解放決戦 ドマ城」での宝箱から入手できます。上記の公式設定も踏まえると、【真打】がオリジナルで、無印はレプリカ、【改】はレプリカのカスタム版と推測します。

国宝に値する刀ゆえ、ドマ城に収蔵されていた【真打】。そのドマ城は、解放決戦の余波で水中に没す定めであり……この刀もまた、運命を共にすると思われました。ヒエンの決意はそれほどであったと言えましょう。刀はまた作れば良いが、国を取り戻すには今しかない、と。しかしなんの因果か、打ち倒すべき代理総督への血路を切り開いた冒険者の前に、藻屑と消えるはずだった刀が転がり込んできたのです。おそらくは、それもまた運命。お主になら譲ってもよいだろう、大切に使えよ!と豪快に笑うヒエンの姿が目に浮かぶようです。

……私の妄想はさておき、ドマ城にあるのが始祖にして唯一、まさに真打となる一振り。そのレプリカが複数出回ったため、エオルゼアに渡来し、イシュガルドでの交換品となったのでしょう。レプリカだからこそ、セイカチャンも「改善の余地がある」と言えたのかもしれません。

小話

つい先日、実物の大包平を観覧してきました。その時の様子がこちら。

人間であれ無機物であれ、なにかを極めた存在は、独特の存在感を放つに至ると考えます。大包平、手前の区画からの通路を左に曲がりきったら展示場所が見える配置だったのですが、通路を曲がる時点で左側から何かを感じたんですね。そして曲がり切ったら正面に大包平が見えてびっくり暁天仰天した次第にござる。

私のスピリチュアル告白はさておき、実に美しく、それでいて豪胆、誠に堂々とした刀です。日本刀を拝観して、キレイだなーとか繊細だなーとかを感じることは多いのですが……こう……あっぱれ!!みたいな感覚を覚えたことはありませんでした。大包平はそれがあった。それほどまでに豪快で爽快、気づけば一時間くらいずーっと眺めていました。

エオルゼアの大包平は、これとは確かに似ても似つかぬ一振りです。ただ、これほどの存在感を表現するのは至難の業でしょう。FFXIV 開発スタッフの腕を侮るわけではなく、何事も枠組みの限界が存在します。現実の大包平は、それほどまでに突き抜けた存在に感じました。あるいは、同様に感じた方がおられて、別方面からの存在感を出そうと考えた結果が、このエオルゼア大包平だったのかな、とも思うのです。

2020/07/31 … 初版公開。

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