FFXIVの開始点・原初世界には、侍や刀、それらを支える剣術道場や刀鍛冶などがいまも存在します。一方で「光の氾濫」によりエオルゼア地方程度を残して壊滅した(といわれる)第一世界では、残念なことに、それらの痕跡は見ることができません。
本記事は、第一世界の侍や刀を取り巻く環境について、私なりに考えた小話です。小話ですので、資料とはなりえません!世界設定集ではなく、松乃雪妄想集なのをゆめゆめお忘れなく!それではいってみよう!
侍は絶滅したでござるよ。
……いきなり夢も希望もありませんけれど。ミンフィリアが侍や忍者フェチなら違ったかもしれませんけれど。光の氾濫を凌いだのがノルヴラント一帯だけであったならば、侍の根付く東方地域は絶賛無の大地です。まあ、全滅でござるよね。
無論、侍の心技体を修めた個人がノルヴラントにおり、生き延びた可能性はあります。けれど、文化を形作る概念としての「侍」は絶えてしまったと考えるのが自然です。後述しますが、光の氾濫発生当初は多少残っていた侍の技が、百年の長きにわたり人類の存亡を戦うなかで失伝したとて、おかしくはありません。
刀鍛冶も絶滅したでござるよ。
……そりゃまあ、そうですよね。刀を主な稼ぎとして生計を立てていたのならば、活躍の場は侍がいるところ=東方地域なのは自明。刀鍛冶は侍よりも東方地域に偏在していたと推測され、であれば、侍よりもその命脈は絶望的です。ならば、彼らが作る刀もまた。
ノルヴラントの鍛冶師でも、刀めいた剣を作ることは当然可能でありましょうが、東方地域で作られていたような質の刀は難しいのではと思います。単純に、製法がダイナミックな規模感で失われたわけですし。これまた後述しますが、常に戦時下であるため、資源を潤沢に使用する刀を作る余裕もないでしょうしね。
罪喰いとの終わらぬ戦い
ノルヴラントの特殊性は、罪喰いとの戦争を百年に渡り続けてきたところにあります。激減した人口、変わり果てた自然、それらを背負っての闘争を余儀なくされる環境。兵は枯渇し、民すらも兵とならざるをえない状況。支給すべき武具の工面すらままならないのに。どうすればよいか。
資源難かつ未熟な兵の運用が必要な場合、槍兵一択です。
なんといっても心理的によい。考えてもみましょう、いきなり明日からバケモノと命のやり取りをするとして、連中の手が届く距離で戦いたいですか。私はイヤです。遠くからがいい。かといって遠隔武器の弓は修練に時間がかかります。矢の調達など消耗も大きい。
その点、槍はお手軽です。長い棒と穂先になりえる刃物や石や鋭いモノがあればよく、練兵も他の武器種ほどの特殊性はありません。戦国時代の農民兵といえば槍のイメージがありますが、メンテナンスは比較的かんたん、生産しやすい、それでいて戦力にしやすいと良いことづくめだったからそうなったわけです。
くわえて、ギリシアのファランクス、マケドニアのサリッサ、スイス傭兵のパイク、織田家の三間槍(長柄槍)などの例があるように、強力な集団戦力としての転用もしやすい。「剣道三倍段」というフレーズも、誤った解釈(素手 vs 剣)が普及していますが、もともとは「薙刀や槍 vs 剣」の意味です。それほどに槍は強いんですね。
……なんだかメチャクチャ槍プッシュをしましたが、それだけ優位性があるのです。
水晶公「刀一本作る資源で槍が何本作れる思とんねん」
水晶公がこんなことを実際に言うかはさておきまして。日立金属の公表しているたたら製鉄のデータでは、砂鉄13㌧、木炭13㌧を費やして、得られる刀の原料「玉鋼」は1㌧未満だそうです。更に鍛刀課程で消耗するため、600gの打刀一本を作るのには3kgの玉鋼が必要だとされます。また、あくまで3kgから一本は「ふつうの」刀を作る場合であり、鍛え上げた高品質な刀を作るには倍の消費はくだらないとかなんとか。
つまり、刀というのは大変に資源を喰う武器なのですね。木炭13㌧とさらっと書きましたけど、どれだけの材木を消費することか。一代(ひとよ。一回のたたら製鉄のサイクル)のために一山が伐採でハゲたというお話もあります。ノルヴラントの木で木炭をそれだけ用意するのはたいへん。
……もちろん、クリスタル合成で解決ですし、素材を見ればここでお話した内容はあてはまりませんけれど、こういう切り口もあるということでひとつ!実際、各地の集落で実用に足る武器として刀が販売されている以上、なんらかの理由で刀あるいは刀に類するとみなせる剣を作成できていたと考えるのが道理です。その理由とは……困ったときの!エーテル!!
ともあれ、実際に問題となったのは、侍の技が継承されていないことでしょう。刀の操り方を教えられる人材がいない以上、武器や兵科としての運用は望むべくもありません。
槍よりも密接した距離での戦闘となる刀は、人員損耗率も高くなりがちです。必要な装備を揃えるのが大変、練兵も大変、なんとか一人前になったとしても喪失しやすい戦力……というのは、計算が立ちづらいのです。個々人のエーテル的特性やら何やらで槍よりも刀に向いた人もいたでしょうけれど、敢えて刀を握らせるには、既に失われたものが多すぎました。
そうして、侍の技や存在、それらを支えた諸々は、クリスタリウムの書庫に眠るばかりの、過去の遺物となっていったのです。
だが、継がれたものはあった。
侍として駆ける者がいなくなったとしても。
刀鍛冶と呼ばれる道が潰えたとしても。
幸運にも光の氾濫を乗り越えた刀、「闇の戦士」の活躍により闇夜とともにもたらされた刀が複数存在します。前述の通り、いま作れるなりの刀を作ったノルヴラントの鍛冶師もいたでしょう。
一度は途絶えた、第一世界での侍と刀。しかし、昼夜の巡りがよみがえったように、無の大地で緑が芽吹いたように、新世代の侍や刀が育まれていくことでしょう。そのロールモデルとなるのは、きっと闇の戦士。
どのように歩みが記憶され、後に残るかは計り知れません。
しかし、個人の名を残すためではなく、大義にかけて悪を許さぬ生き様をこそ残すため、善き侍として、刀を携え歩んでいきたいなと考える私でございました!
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